歯科医師のための法律相談 デンタルローヤー

応召義務について

誰でもいつでも診なくてはいけない?

歯科医師の先生方は、「患者様を助けねばならない」という使命感や、応召義務違反になることへの恐れから、患者様からの無理な要求を拒めず苦慮する場合が多々あります。

確かに、歯科医師には応召義務がありますが、義務が認められないケースもあります。
そもそも、応召義務とは、「診療に従事する歯科医師は、診察治療の求があつた場合には、正当な事由がなければ、これを拒んではならない。(歯科医師法第19条第1項)」と定められたものです。
ですから、正当な事由があれば、拒否をしてよいことになります。

夫のかわりに薬を貰いにきましたという妻

一つ例をあげますと、普段から通院している女性が一人で来院し、女性本人の治療後に、夫も歯痛だからといって夫の分の薬を求めました。ルールがあるから処方はできないと説明しても納得せず、長時間の対応を余儀なくされ、ご不満を持ったまま、女性本人の医療費を支払わずに帰ってしまいました。
このような要求は、しばしば起こる事例です。

勿論、無診察処方は違反にあたりますから、処方は許されませんが、治療にきた患者様を無下に帰らせてしまっても良いのだろうか?また怒っている患者様に対して支払いを要求し難いと悩まれる先生方もいらっしゃることでしょう。

このような事態への対応のポイントは、①応じられない要求はしっかりと断ること、②未払い医療費をきちんと請求することです。

①まず、無診察処方の要求に対しては、単に、「ルールだからできない」と説明するにとどまらず、「ルールがあるので、本人が来院しない限り、当医院では処方はしません」と、断るだけではなくなぜ診察をせずに薬を処方出来ないかについて、患者様の安全のためであることを説明して納得してもらいましょう。
もし、ご自身で対応可能と判断できる場合は、「次回、本人を連れて来てください」と言い添えればよいでしょう。
遠慮がちな対応は、強く言えば要求が通るかもしれないと期待させ、却ってクレームを長引かせます。クレーム対応に長い時間を割くとなると、他の業務に支障が出ます。そのような事態を防止するためにも、毅然とした対応を心がけるのが重要です。

②また、医療費の未払いについては、帰り際に、支払いを拒否されたときに、治療を受けた分の費用は発生しているため、お支払いいただく必要があることを説明することです。
放置してしまうと、未払いしても大丈夫な病院だと思われ、未収額の増大に繋がりかねません。それを防止するには、何よりも、その日の内に回収することが肝要です。
そのまま帰ってしまった場合には、医院から連絡を取り、医療費の支払いを求めるようにするのがよいでしょう。
当事務所では、顧問先医院の未払い医療費の支払い督促手続をすることがありますが、たとえ少額でもしっかり回収することに意義があります。何度か督促をしても回収が難しい場合には、弁護士に相談することも有効な手段です。弁護士費用で足が出ないような報酬体系を考えております。

※他の応召義務違反に当たらない具体例等につきましては、当事務所ホームページの「誰でもいつでも診なくてはいけない?(応召義務について)」もご参照ください。